炭鉱遺産の置き場なく、関係者悩む

 九州大記録資料館(旧九州大石炭研究資料センター、福岡市東区箱崎)が、来年10月に迫る伊都キャンパス(同市西区元岡)への移転を控え、保存しているディーゼル機関車やトロッコの引き取り手を探している。新キャンパスでは保管場所が確保できないためで譲渡先が見つからなければ廃棄するしかなく、関係者が頭を悩ませている。

 機関車は1956年日立製の「防爆型ディーゼル機関車」で、長さ3.1メートル、幅1.1メートル、高さ1.4メートル、重さ6.2トン。佐賀県内の炭鉱で石炭や人員の輸送に使われ、九州電力唐津発電所(佐賀県唐津市)で保存されていたが80年に譲り受けた。トロッコは鉄製で長さ約2メートル、幅約1.1メートル、高さ約1メートル。長さ約8メートルのレールも4本あり、いずれも入手経路は不明という。

九州大学が引き取り手を探している機関車。写真は譲り受けた1980年当時=同大提供 © 毎日新聞 九州大学が引き取り手を探している機関車。写真は譲り受けた1980年当時=同大提供

 前身の九州大石炭研究資料センターは、近代日本の発展を支えた石炭産業の歴史的な役割と課題を研究するため79年に設置された。当時、衰退傾向にあった石炭産業関係資料の散逸を防ごうと、記録文書だけでなく、さまざまな資料を収集。「総資本と総労働の対決」といわれた労働争議「三池争議」(59~60年)で使われたヘルメットなど10万点以上を保存している。

 箱崎キャンパスの移転に伴って資料館も移ることになり、資料のほとんどは新キャンパスの図書館で引き続き保存することになったが、屋内で保管してきた機関車、トロッコ、レールは保存場所を確保することができなかった。一昨年から九州の炭鉱関係の資料館などに譲渡を打診してきたが、色よい返事はなかったという。

 資料館長の坂上康俊九州大教授は「ほとんど残っていない希少な資料と思われ、本来なら新キャンパスで引き続き守っていくべきものだが持っていけず非常に残念。炭鉱関係でなくてもどこかゆかりのあるところで引き取って展示してもらいたい」と話している。【合田月美】

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